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バッハ /
6
つのヴァイオリン・ソナタ集
とりわけバッハの無伴奏ヴァイオリンのための作品と比較して、6つのソナタの書法をど
のように捉えていらっしゃいますか?
ND.:
驚くべき創意に富んだ
6
つのソナタでは、ヴァイオリンと鍵盤楽器が対等に扱われて
います。バッハはすべての鍵盤パートを譜に記しているため、基本的には即興を要する箇
所はありません。
6
つのソナタの構成や霊感の源は、じつにさまざまです。
私自身はこの曲集の中に、カンタータの要素と、イタリア音楽からの影響を聴き取ります。し
たがってこのソナタ集は、イタリア音楽の伝統にもとづく
6
つの教会ソナタから成り、それらは
同一の型に従って構築されていると定義できるでしょう。それこそが、器楽組曲の精神に則
り舞曲が取り入れられている《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》との大きな
違いです。
《ヴァイオリンと鍵盤楽器のための
6
つのソナタ》は、全体的により強固な一貫性を保ち、舞
曲とも距離を置いています。事実、このソナタ集と比べて、無伴奏ヴァイオリンのための曲
集は、奏者により大きな自由を与えています。その背後には、奏者が独りで自己に対峙す
るという形式面での理由に加えて、リズムの多様性が演奏の可能性を広げているという理
由もあります。無伴奏ヴァイオリンのための曲集にみられるイタリア的な奔放さが、ある種の
ユーモア――そして時に嘲りさえも――を湛えていることは疑いの余地がありません。そう
した性格は、
6
つのソナタの中には見出されないのです。