

ゲイリー・ホフマン
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ブラームスの2作のチェロ・ソナタを初めて聴いたのはいつでしょうか?
ゲイリー・ホフマン
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子どもの頃、確か
9
~
10
歳のときです。私は音楽一家の生まれで、
おばがチェリストでした。彼女は当時、シカゴのオーケストラに所属していました。しかし
私が初めてブラームスのチェロ・ソナタを聴いたのは彼女の演奏を通してではありませ
ん。記憶は定かではありませんが、ラジオあるいはレコードで耳にしたのが最初であっ
たように思います。いずれにせよ、チェロ・ソナタを聴く前からすでに、ブラームスがチェ
ロのために書いた他の作品に精通していました。それでも、初めてチェロ・ソナタに接し
たときには、すぐさま強く心動かされました。深遠さを感じ、出会うべくして出会ったよう
な感覚をおぼえたのです。当時の私は、すでにブラームスの音楽にある程度、慣れ親し
んでいました。父がブラームスの交響曲を指揮していましたし、ヴァイオリニストであった
母もソナタや協奏曲を奏でていたからです。そのため、このあたりのジャンルやブラーム
スの書法にはなじみがありました。さらにピアニストの兄が、しばしば自宅でブラームスを
弾いていました。その後に、家族でブラームスの三重奏曲や四重奏曲や五重奏曲を合
奏するようにもなりました。こうした環境が、私の音楽に対する趣味嗜好や、私とブラーム
スの音楽の関係を育んでくれました。ブラームスはごく身近な存在だったのです。