

ゲイリー・ホフマン
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あなたがいつも弾いているのは、レナード・ローズが長年所有していた名器アマティで
すね。ローズはブラームスのソナタを得意としたチェリストのひとりです。演奏中に彼に
思いをはせることもあるのでしょうか?
この楽器を弾き始めたとき、最初の
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年ほどは、かつての楽器の所有者を誰にも知らせ
ませんでした。ところが当時の音楽ファンたちからは、演奏後に「あなたの演奏はレナー
ド・ローズを彷彿させるが、彼に師事していたことがあるのか」と聞かれました。じっさい
私は、この楽器の響きの一部が、ローズとの長期にわたる関係に起因しているという印
象を強く抱きました。また、特にドヴォルザークのチェロ協奏曲やブラームスの一連の作
品において、ローズの演奏はこの楽器の特徴から強い影響を受けていたのではないか
とも感じていました。しかしそうした実感は、時とともに薄れていきました。同時に、アマ
ティが私の演奏、あるいは——こう述べてもよいのであれば——私の身体に、なじんできた
ように感じました。この楽器は、あらゆる意味で名器です。その特徴のひとつは、それぞ
れの音域のサウンドがじつに独特でコントラストに富んでいる点にあると思います。全体
的に素晴らしく響きますので、この楽器の欠点を探すのは困難です。私がアマティで演
奏するようになってから、楽器は若干変化しました。しかし、その強い個性は昔のままで
す。きわめて自然に歌ってくれますし、あらゆる色彩を備えています。私の演奏が不十
分であるとき、それは楽器のせいではなく、私のせいです。