

ゲイリー・ホフマン
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ブラームスの2つのソナタを隔てる長い月日——ほぼ四半世紀——を、どのように捉え
ていらっしゃいますか?
私のレパートリーにはブラームスのすべての室内楽曲が含まれています。私にとって
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つのソナタは、彼の膨大な数の室内楽作品の一部を成すものです。
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作のあいだには
当然、チェロ・パートの書法、チェロとピアノの関係性、構成などの面で、さまざまな大き
な相違があります。それらは対照的とさえ言えます。しかし、三重奏曲や六重奏曲や五
重奏曲を演奏したとき、あるいは学生オーケストラで交響曲のチェロ・パートを演奏した
ときに、気づいたことがあります。ブラームスはチェロのために多様な書法を用いました
が、そこには同時に、多くの類似性があるのです。一例をあげるなら、私はチェロ・ソナ
タ第
1
番を演奏しながら、彼のト長調の六重奏曲の余韻を多分に感じ取ります。第1楽章
の第
1
主題の冒頭が、六重奏曲の第
3
楽章の変奏曲を想起させるのです。私はしばしば
マスター・クラスで指導していますが、ブラームスのソナタ第
1
番を課題にもってくる学生
たちの多くは、ト長調の六重奏曲を知りません。しかしブラームスの全室内楽曲は、ひ
とつの大陸を成しています。あるいは、彼のすべての室内楽曲は繋がっています。喩え
るならそこには、同じ景観が広がっているのです。一方で、チェロ・ソナタ第
2
番は、作品
101
の三重奏曲や交響曲第
3
番と非常に近しい関係にありますから、この
2
曲を把握すれ
ば、ソナタ第
2
番の構造の内部をよりよく理解することができると思います。確かに
2
つの
ソナタの作曲時期はかなり離れていますが、ブラームスが
2
曲のあいだに書いた他の多
くの作品を演奏してみると、ある意味で逆の印象を抱くこともあります。
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作のソナタは、
皆が思っているほどかけ離れた音楽ではないと思い知らされるのです。