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ヨハネス・ブラームス
ブラームスのソナタの録音を望むようになったのはいつ頃でしょうか?
私はすべてを早急にこなそうとするタイプではありません。
30
歳を迎える前にバッハの
無伴奏チェロ組曲やベートーヴェンのチェロ・ソナタを録音している若いチェリストたちを
見ると、
10
年後に再び録音に挑む可能性が残されているとはいえ、やはり少し時期尚早
なのではないかと思ってしまいます。
私はしかるべき時期にしかるべき作品を録音してきたと思っています。ただ、ゴラブとレ
コーディングをしなかったことは悔やまれます。彼が癌を告知され、その後まもなく命を
落としたとき、私たちはベートーヴェンのすべてのチェロ・ソナタとチェロのための変奏曲
を録音する準備ができていました。以来、なかなか前向きに“ベートーヴェンをいつか録
音しよう”と考えることができません。ゴラブはきわめて身近な存在でしたし、彼とは演奏
中に、じつに自然なコミュニケーションを取ることができたからです。ところで私が、ある
作品が録音できる段階に達したと思うのは、作品が完全に自分のものになったとき、つ
まりその音楽が文字通り、自分の中から生じてくるようになったときです。それが良い判
断なのか否か、適切か否かは、自分では評価できませんし、私が評価すべきことでもあ
りません。いずれにせよ、ある作品を録音するのは、それが自分自身の一部になったと
きです。