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ヨハネス・ブラームス

チェロ奏者ロベルト・ハウスマンは、ソナタ第1番を自身のレパートリーに組み入れ、

1870

代にイギリスやヨーロッパ大陸で頻繁に演奏した。ハウスマンが誇る美しい音色は、とりわけ

独奏で魅力を放ったが、一方で彼は、ヨアヒムが立ち上げた弦楽四重奏団のメンバーとし

ても名演を重ねた。ハウスマンがピアッティから受け継いだ卓越したテクニックは、ブラーム

スのソナタ第1番の姿を一新させた。この作品の真価を伝えることができるチェロ奏者が、よ

うやく現れたのである。

1886

年の夏、ホーフシュテッテンのトゥーン湖畔で

2

作目のチェロ・ソ

ナタに着手したブラームスは、当然のことながらハウスマンの演奏を想定して作曲の筆を進

めた。それから

3

年にわたり、ブラームスは夏場の精力的な作曲活動に身を投じることにな

る。避暑地トゥーン湖畔での快適な日々から、リートの傑作、

2

つのヴァイオリン・ソナタ、ヴァ

イオリン協奏曲、そしてハウスマンに感化されて書かれたヴァイオリンとチェロのための二重

協奏曲が、次々に生み出されていくのである。