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ゲイリー・ホフマン

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ブラームスのソナタの演奏に関して言えば、あなたの場合、そうした確信はいつ頃生ま

れたとお考えですか?

かなり早い時期だったように思います。

2

つのソナタとはつねに強く結ばれていましたか

ら、少なくとも土台はかなり早くからできあがっていました。しかし、この

2

作の中には、絶

えず解釈を深めることができる可能性が潜んでいます。言うなれば、この

2

作を演奏す

ることは、終わりのない“ワーク・イン・プログレス”なのです。おまけにそこには“ミラー効

果”もあります。この

2

作への理解が深まれば深まるほど、作品が私自身を発見させてく

れるという意味で……。おそらくそれは、他のあらゆる傑作にも当てはまることでしょう。

優れた音楽は最終的に、私たちに語りかけるだけでなく、私たちについて語ってくれる

のです。

長年にわたりブラームスの

2

つのソナタの演奏を重ねてきた中で、作品への理解が、自

分自身の成長と連動していることに気づきました。また

2

作のソナタは、ベートーヴェンの

一連のチェロ・ソナタや

J.S.

バッハの無伴奏チェロ組曲と同様に無尽蔵の内容を湛えて

おり、啓示的です。真理に到達した彼らの作品は、まったく同じ次元に位置しているの

です。