

今回のクレール・デゼールとの共演はいかがでしたか?
デゼールと私の関係は、かつてのゴラブと私の関係を思い起こさせま
す。ゴラブとは、演奏中の作品について語り合うことはありませんでし
た。おまけに私たちは普段から、音楽についてはあまり話をしませんで
した。彼との音楽作りは、作品ができるだけ自発的に歩みを進め、自ら
扉を開け、私たちに他の多くの選択肢を与えるよう促すことを目指すも
のであったからです。
デゼールと私の方法もこれに似ています。私はサッカーが大好きで、彼
女はラグビーが大好きですので、スポーツの話題では盛り上がります
が、今現在ともに演奏している作品について議論することはほとんどあ
りません。私たちは互いの演奏を聴き合い、さまざまなことを試します。
コンサートでは、解釈はその場でおのずと形成されます。私はこうした
やり方が好きです。もしも楽譜の各ページに、たったひとつの意図を当
てはめてしまったら、作品は硬直化してしまいます。作品は、生きた体験
を必要としているのです。一方でスタジオ・レコーディングとは、そうした
すべての要素を固定する試みです。私たちは録音した演奏を繰り返し
聴いて、選んだテイクをモンタージュすることができます。その場合、自
分の演奏を客観的に聴くことになります。いずれにせよ、録音でも、実
体験が状況を左右します。それは喩えるならば、ある瞬間の解釈を、何
らかの理想のもとに固定することなのです。