Background Image
Previous Page  37 / 68 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 37 / 68 Next Page
Page Background

37

フィリップ・ビアンコーニ

《パピヨン》には、その後のシューマンの音楽の発展を予示する要素がふんだんに見出

されます。一般的に、この最初期の曲集の重要性は過小評価されているのではないでし

ょうか?

その通りです。実は私は、デビュー当時に初めて《パピヨン》に取り組んだ際には、この曲

集の豊かさに気づきませんでした。むしろ、苦悩に彩られた《幻想曲》や《クライスレリアー

ナ》に惹かれたのです。時とともに、《パピヨン》の重要性の大きさにようやく気づかされまし

た。《パピヨン》は、シューマンが将来に書くことになる、多くの短い曲から成る曲集の数々

を先取りしています(

4

年後の《謝肉祭》を筆頭に。)しかし同時に、彼の極めて特異な才能

が真に開花した曲集でもあります。

「ジャン・パウルの『生意気ざかり』の最終章を読めば、《パピヨン》を理解できるだろう」と、シ

ューマンは述べました。この小説の最後の仮面舞踏会のシーンが、曲集全体に霊感を与

えたのでしょうか?それともシューマンは、(おそらく四手のために書いた小品に由来する)

既存の音楽素材を用いた作品を、テキストに対応させようとしたのでしょうか

?

全ては、かす

かな謎に包まれています。それでも心理学的な視点からみれば、《パピヨン》と、パウルが

描いた“仮面舞踏会”の間には、明らかに密接な関係があります。