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フィリップ・ビアンコーニ
《パピヨン》には、その後のシューマンの音楽の発展を予示する要素がふんだんに見出
されます。一般的に、この最初期の曲集の重要性は過小評価されているのではないでし
ょうか?
その通りです。実は私は、デビュー当時に初めて《パピヨン》に取り組んだ際には、この曲
集の豊かさに気づきませんでした。むしろ、苦悩に彩られた《幻想曲》や《クライスレリアー
ナ》に惹かれたのです。時とともに、《パピヨン》の重要性の大きさにようやく気づかされまし
た。《パピヨン》は、シューマンが将来に書くことになる、多くの短い曲から成る曲集の数々
を先取りしています(
4
年後の《謝肉祭》を筆頭に。)しかし同時に、彼の極めて特異な才能
が真に開花した曲集でもあります。
「ジャン・パウルの『生意気ざかり』の最終章を読めば、《パピヨン》を理解できるだろう」と、シ
ューマンは述べました。この小説の最後の仮面舞踏会のシーンが、曲集全体に霊感を与
えたのでしょうか?それともシューマンは、(おそらく四手のために書いた小品に由来する)
既存の音楽素材を用いた作品を、テキストに対応させようとしたのでしょうか
?
全ては、かす
かな謎に包まれています。それでも心理学的な視点からみれば、《パピヨン》と、パウルが
描いた“仮面舞踏会”の間には、明らかに密接な関係があります。