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フィリップ・ビアンコーニ
シューマンの音楽との出会いについてお話しください。
私のレパートリーにシューマンが加わり、彼の音楽に愛着を抱くようになったのは、ショパン
やドビュッシーよりも後年のことです。子どもの頃は、シューマンの音楽をほとんど聴きませ
んでした。ニース音楽院で先生から《謝肉祭》を弾くよう指導されたのが
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歳の時です。正
直、当時は、小品が次々に連なったこの曲集を、あまり好きになれませんでした。ショパン
のバラードのほうが、私をいっそう熱狂させたのです。
音楽院を卒業した直後に、ニース管弦楽団とピアノ協奏曲を共演した経験が、私のシュー
マンへの情熱に火をつけました。この曲に出会い探究を進める中で、私は熱狂し、心動か
されたのです。素晴らしい思い出です。生まれて初めて演奏した協奏曲がシューマンのそ
れであったのは、実に幸運でした。もっとも美しいピアノ協奏曲のひとつに数えられますし、
シューマンの最高傑作のひとつでもありますから。
その後すぐさま、《幻想曲》《ダヴィッド同盟舞曲集》《クライスレリアーナ》に夢中になりまし
たが、《謝肉祭》にはさほど惹かれませんでした。依然として、この曲に対して最初に抱いた
賛否相半ばの感情に支配されていたのです。声楽に目がない私は、シューマンの多くの
リート作品にも取り組むようになり、数年後にはヘルマン・プライの伴奏者として数曲を演奏
する機会にも恵まれました。しかし私たちのレパートリーの核はシューベルトでした。私はそ
れを不満に思っているわけではありません。それでも、偉大なバリトン歌手であるプライと共
に、もっと多くのシューマンのリートを演奏しなかったことは悔やまれます。いずれにせよ私
は、プライの演奏の深みと強さから、現在も深い影響を受けています。彼との共演はまた、
シューベルトやシューマンのピアノ音楽への私のアプローチを極めて豊かにしてくれました。
このようにシューマンの音楽は、ピアニストとして歩み始めて以来、常に私の世界の中に在
り続けています。