Background Image
Previous Page  35 / 68 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 35 / 68 Next Page
Page Background

35

フィリップ・ビアンコーニ

シューマンの音楽との出会いについてお話しください。

私のレパートリーにシューマンが加わり、彼の音楽に愛着を抱くようになったのは、ショパン

やドビュッシーよりも後年のことです。子どもの頃は、シューマンの音楽をほとんど聴きませ

んでした。ニース音楽院で先生から《謝肉祭》を弾くよう指導されたのが

13

歳の時です。正

直、当時は、小品が次々に連なったこの曲集を、あまり好きになれませんでした。ショパン

のバラードのほうが、私をいっそう熱狂させたのです。

音楽院を卒業した直後に、ニース管弦楽団とピアノ協奏曲を共演した経験が、私のシュー

マンへの情熱に火をつけました。この曲に出会い探究を進める中で、私は熱狂し、心動か

されたのです。素晴らしい思い出です。生まれて初めて演奏した協奏曲がシューマンのそ

れであったのは、実に幸運でした。もっとも美しいピアノ協奏曲のひとつに数えられますし、

シューマンの最高傑作のひとつでもありますから。

その後すぐさま、《幻想曲》《ダヴィッド同盟舞曲集》《クライスレリアーナ》に夢中になりまし

たが、《謝肉祭》にはさほど惹かれませんでした。依然として、この曲に対して最初に抱いた

賛否相半ばの感情に支配されていたのです。声楽に目がない私は、シューマンの多くの

リート作品にも取り組むようになり、数年後にはヘルマン・プライの伴奏者として数曲を演奏

する機会にも恵まれました。しかし私たちのレパートリーの核はシューベルトでした。私はそ

れを不満に思っているわけではありません。それでも、偉大なバリトン歌手であるプライと共

に、もっと多くのシューマンのリートを演奏しなかったことは悔やまれます。いずれにせよ私

は、プライの演奏の深みと強さから、現在も深い影響を受けています。彼との共演はまた、

シューベルトやシューマンのピアノ音楽への私のアプローチを極めて豊かにしてくれました。

このようにシューマンの音楽は、ピアニストとして歩み始めて以来、常に私の世界の中に在

り続けています。