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ジョフロワ・クトー
彼が作品全体と真剣に向き合っていけば、世界は開かれる…。「ブラームス
の音楽は、彼方からやって来るエネルギーを必要とします――私たち奏者は
そこで、自然の力を味方にしながら、あのエネルギーに腕を折られないすべ
を学ぶのです。」クトーはこう述べながら、今回の録音がまさに自分に打って
つけのプロジェクトであることを確信する。
というのも、クトーは子供の頃、体操選手になることを目指していた。結局はピ
アノの才能を開花させた彼は、それでも幾分、往時へのノスタルジーを抱き
続けている(なんとブラームス的だろう)――それは、彼の肉体の芯に深く根
付いている、リスクを志向する感覚である。
壮大な作品群を捉え、これを文字通り自らの身体の一部とすることは、精神・
肉体の両面において“アスリート的”な行為だ。その挑戦において、身体は
エネルギーの中に投入される。かつて体操の技の習得に励んだクトーはそこ
に、重力と無重力、頑丈さと柔軟さ、力強い跳躍と優美な動きの間に生じる
緊張を再び見出すことになるのだ。