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フランツ・リスト
さらに、彼がパリで
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歳の時に《幻想交響曲》の初演に接し、その音楽に初めて触れたベ
ルリオーズの存在を忘れてはなりませんね。リストは後に交響詩において、《幻想交響曲》
を支えた標題音楽の概念を思い起こすのです。ベルリオーズの才能に魅せられたリスト
は、
1831
年に《幻想交響曲》のピアノ編曲版を自費で出版することになります。《ソナタ ロ短
調》の「スケルツォ」の辛辣な笑いには、「魔女の夜宴」の幻聴のエコーが響いています。そ
してリストに影響を与えた作品として、ベートーヴェンの作品
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やシューベルトの《さすら
い人幻想曲》を挙げないわけにはいきません。後者は古典派的な
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楽章構成ですが、楽章
は切れ目なく演奏され、通常の主題以上の役割を果たす主題が展開されます。事実、この
作品の主役である“さすらい人”は、気高く、そして悲しみと共に提示され、ダンスを伴った
後、やがて勝利を得るのです。リストもまた《ソナタ ロ短調》を、同様の循環形式によって構
築していくことになります。
リストの《ソナタ ロ短調》は表裏一体の思想と感情です。彼が受けた素晴らしい影響を示し
ながら、生から死へ――あるいはその後の世界へ――の軌跡を描くのです。このソナタに
おいては、疑念と確信を抱き、痛みを体験し、喜びによって照らされる私たち一人一人が、
身体と精神の中で感じうるものへと意識を向けます。このソナタはまた、私たちを自己の探
究の道へと導き、より普遍的な真実へと向かわせるのです。
《ソナタ ロ短調》はそうした物々の総体であり、種々の異なる世界である
と同時に、一つの世界でもあります。崇高な中間楽章にダンテのベアトリ
ーチェが出現することを忘れてはなりません。