

フローリアン・ノアック
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同じくあなたが編曲したヤナーチェクの《ラシュスコ舞曲集》2曲においても、民俗的
な“真正”が保たれているのでしょうか?
チェコに関連する作品の選曲においても、紆余曲折がありました。当初は、ベドルジハ・
スメタナの作品を検討していたのです。彼の記念碑的ともいえる一連のピアノ曲は、見
事に書かれており、そこにはチェコの民俗音楽が豊かに反映されています。しかし私は
結局、スメタナのきわめてピアニスティックな書法は、ドイツ音楽に深く根差した構造によ
って支えられているとの結論にいたりました。
そのため、再び未知の領域に足を踏み入れることにし、ヤナーチェクの管弦楽曲、つま
り《ラシュスコ舞曲集》の第2曲と第5曲を編曲したのです。いずれの曲の“芳香”も、正真
正銘にチェコ的であり、両曲はごく短いモチーフの反復を基礎に置いている点で似てい
ます。その管弦楽法はじつに豊かであり、これをピアノに置き換えることは、難しくも刺激
的な試みでした。