Background Image
Previous Page  41 / 64 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 41 / 64 Next Page
Page Background

フローリアン・ノアック

41

同じくあなたが編曲したヤナーチェクの《ラシュスコ舞曲集》2曲においても、民俗的

な“真正”が保たれているのでしょうか?

チェコに関連する作品の選曲においても、紆余曲折がありました。当初は、ベドルジハ・

スメタナの作品を検討していたのです。彼の記念碑的ともいえる一連のピアノ曲は、見

事に書かれており、そこにはチェコの民俗音楽が豊かに反映されています。しかし私は

結局、スメタナのきわめてピアニスティックな書法は、ドイツ音楽に深く根差した構造によ

って支えられているとの結論にいたりました。

そのため、再び未知の領域に足を踏み入れることにし、ヤナーチェクの管弦楽曲、つま

り《ラシュスコ舞曲集》の第2曲と第5曲を編曲したのです。いずれの曲の“芳香”も、正真

正銘にチェコ的であり、両曲はごく短いモチーフの反復を基礎に置いている点で似てい

ます。その管弦楽法はじつに豊かであり、これをピアノに置き換えることは、難しくも刺激

的な試みでした。