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ある旅人のアルバム
シューベルトのワルツにも、手を加えていらっしゃるのでしょうか?
いいえ、編曲はせず、そのまますべて原曲どおりに弾いています。演奏に当たっては、
実際のワルツの動きにできるだけ近づけるように努めました。
“フランスもの”としては、ポール・ラドミローの作品を編曲なさっていますね。この“発
掘”には驚かされます……
ラドミローはフォーレの弟子です。ニンと同様に、ラドミローの存在も、サクルの『ピアノ音
楽』を通じて知りました。私はラドミローの音楽を聴き、すっかり虜になってしまったので
す(じつは作品のタイトル《トレギエの風笛(バグパイプ)の旋律にもとづく5つの変奏曲》
に、すでに興味をそそられました!)この音楽は、私が子どものときに聴きに行ったある
演奏会を思い出させてくれます。フルート奏者として普段はクラシック音楽を吹いていた
父がこのとき演奏したケルト音楽、とりわけブルターニュの舞曲が、印象に残っているの
です。このラドミローの変奏曲には、オーケストラ版とピアノ連弾版(4手)があるのです
が、私が編曲したピアノ独奏版は、音色が多彩なオーケストラ版にもとづいています。ピ
アノ連弾版を参照するよりも、より自由に想像を広げることができると期待したのです。