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フローリアン・ノアック

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ホアキン・ニンの《イベリア舞曲、セビリアでの五月の一夜》はいかがでしょうか?

ニンの存在を知ったのはごく最近です。最初は当然、もっと有名なスペイン人作曲家(と

りわけファリャ)を取り上げるつもりでいました。しかしニンの作品は、きわめて力強くフラメ

ンコを連想させるため、今回のプログラムと自然に合致したのです。ただしニン本人は、

実際のフラメンコに由来する旋律は一切用いていないと証言しています。この作品は

大規模な幻想曲で、そのピアノ書法はギターを彷彿させます。この音楽を支えているの

は、即興的な感覚です。

そのようなニンの舞曲の気質は、シューベルトのワルツ(

D145

)と通底しているように思え

ます。ところでこのワルツの選曲においても、苦労を味わいました。シューベルトは

300

曲以上ものワルツを書いているからです。いっとき私は、リストがシューベルトのワルツを

改編曲した、原曲よりもいっそう洗練された《ウィーンの夜会》をプログラムに含めようと考

えていました。しかしその後、やはり原曲に惹かれました。素朴さと瑞々しさが、よりいっ

そう魅力的に感じられたのです。