

フローリアン・ノアック
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まずは、あなたが編曲したブラームスの《ドイツ民謡集》4曲についてお話を伺いたい
のですが……
私にとって《ドイツ民謡集》の魅力は、しばしば立ち現れる叙述的な雰囲気(とりわけ<グ
ンヒルデ>)にあります。そしてどの曲もひとたび聴けば、永遠に記憶に刻まれます。今
回とりわけ困難を極めたのは、
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曲から成る《ドイツ民謡集》から、たった
4
曲だけを選び
出す作業です。ブラームスはその生涯の間ずっと、民俗音楽と密な関係を保っていまし
た。彼の“芸術音楽”の領域の作品は、しばしば民俗音楽から影響を受けていますし、
一方で《ドイツ民謡集》の数曲には、彼独自の音楽言語が、ささやかながら明瞭な形で
見出されます。
《ドイツ民謡集》をピアノ用に編曲する際には、繊細な配慮が求められます。実際、原曲
では、リフレインで同じ音楽が繰り返されながら、歌詞はつど変化しますが、この叙述の
効果を生かすために、私の編曲版では主題が回帰するたびに装飾音が変化します。当
然、この種の音楽は“シンプル”でありながら、ごくわずかな変化によって真髄が損なわ
れる場合がありますので、それを肝に銘じて編曲したつもりです。編曲は一筋縄ではい
かず、とりわけ伴奏パートの編曲には長い時間がかかりました。