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フローリアン・ノアック

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“音楽による旅”をテーマにプログラムを組んだきっかけをお話しください。

きっかけは幾つかあります。そのうちのひとつは、遠い国々を喚起する作品に魅せられ、

新鮮な驚きを与えられた幼い頃の経験です(例えば《ロシアの歌》に触れ、想像をかき

たてられました!)ギイ・サクルの著作『ピアノ音楽

La Musique de piano

』(

Collection

“Bouquins”, ed. Robert Laffont, 1998

)によって育まれた好奇心も、今回のプログラミ

ングを支えています。この本の中でサクルは、揺るぎない確信をもって、知られざる作品

について語っています。私にとってこの本の表紙をめくることは、たいていは名前すら耳

にしたことのない作曲家の作品を求めて冒険に乗り出すことを意味します。

さらに私は、ここ数年のあいだ、さまざまな民俗音楽からインスピレーションを得た作曲

家たちの多くの作品に出会いました。彼らは民俗音楽の独特な性格と豊かな音楽語法

に感化されたのです。そこで私は、彼らの作品をひとつの場所に集め、芸術音楽と民俗

音楽の関係を探求してみたいという思いにかられました。またそれらの作品を通じて、

音楽が日常の枠外にある芸術品ではなく、日々の生活——祝宴、祭り、舞踊など——の中

に“必需品”としてシンプルに根づいていた時代を懐古したいと望みました。

色々と調べているあいだに、もともとはピアノのために書かれていない作品に心惹かれる

ことが多々ありました。それらを多少なりとも自由に編曲し、今回のディスクに含めること

にしました。