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バッハ /

6

つのヴァイオリン・ソナタ集

極めて複雑だと言われることもあるバッハのヴァイオリン・ソナタを前にして、怖気づくこ

とは無いのでしょうか?

ND.:

バッハの音楽が複雑なのですか

?

そのように考えたことは一度もありません。ヴァイオ

リニストにとって真に“複雑”な傑作は、バルトークの《ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第

1

番》、シェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》《ヴァイオリンとピアノのための幻想曲》、エ

ネスクの《八重奏曲》などではないでしょうか……。

バッハの独奏曲と室内楽曲の鍵盤書法の違いを感じることはありますか?

JP.:

両者に根本的な違いは無いと思います。ただしヴァイオリン・ソナタの幾つかの楽章

において、鍵盤パートが管弦楽的な効果をねらって書かれていることは明らかです。第

1

番の冒頭“ラメント”や第

3

番の第

1

楽章が、その最たる例でしょう。これらの楽章の鍵盤書

法をあえて形容するならば “前衛的”です。それはチェンバロに多くの問題を突きつけて

いるのではないかと想像します。