Background Image
Previous Page  31 / 68 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 31 / 68 Next Page
Page Background

ニコラ・ドートリクール&ユホ・ポホヨネン

31

録音に際して、バッハの作品にどのようなアプローチをなさったのでしょうか?

ニコラ・ドートリクール(以後、ND):

バッハの音楽を録音するには、さまざまな様式を統合

する力が必要であるように思います。実際、バッハの作品に取り組む場合、私たちは演奏

様式に関して多くの問題に直面しますし、極めて多様なヴァイオリン奏法の伝統に向き合う

ことにもなります。奏者は十分な自信を得たうえで、ある段階で“準備は万全だ”と判断しな

ければなりません。だからこそ、今回の録音が実現したことは、私たちにとって大きな喜び

です。

6

曲のソナタの演奏において——これは大半のレパートリーにも当てはまるのではな

いでしょうか?——、奏者は“ごまかす”ことができません。バッハの音楽は一切の無駄のな

い“裸”の状態でそこにあり、私にとってはつねに神秘的な存在です。

今回の録音で、私はシンプルな事だけを重視しました。自分がバッハの音楽に抱いている

無条件の愛を信じること、悪趣味に陥らないこと、これまでに習得したモダン楽器のテクニ

ックを最良の形で活かすことだけを、念頭に置いたのです。つまり、演奏に際して謙虚であ

り続け、作品を支配しようとはしないよう努めました。それは、作品を自分のものにし、私た

ち奏者自身の“話法”を探求することによって実現されます。要するに、小節線だけに頼る

ことなく、より踏み込んだアプローチをしなければなりません!

ユホ・ポホヨネン(以後、JP):

バッハの作品は、私のレパートリーの中で極めて特別な地

位を占めています。 私はこれまでずっと、バッハの音楽を学び、演奏し続けてきました。バ

ッハの音楽への理解は、他のあらゆる作曲家たちに近づくための鍵の一つでもあります。

バッハの音楽的遺産は、彼以後のあらゆる音楽家たちに影響を与えたのですから。