

メナへム・プレスラー
35
日々、どのようにエネルギーを維持しているのですか?
毎日4時間、練習しています。レッスンや演奏旅行やコンサートがある日でも、必ずこれを
守っています。
実際のところ、すべての公演で私に付き添ってくれているアナベル・ヴァイデンフェルドなし
には、やっていけないと思います。彼女が私を助け、前進する力を授けてくれます。働く環
境は何よりも重要です。例えば、このアルバムのレコーディング・プロデューサーは大変な
音楽好きで、彼と私は、モーツァルトへの愛を共有しています。このように周囲に支えられ
ていると意識することは大切です。精神的な面についてお話しするなら、人はみな幸福や
個々の達成を追求していますが、私の“追求”の手段はピアノです。私には、音楽に向き合
い、あらゆる作品を演奏し続けることが必要なのです。それは私の心を豊かにし、私のうち
にある情熱や好奇心を維持してくれます。
貴方にとって、ドイツ系のレパートリーを掘り下げることは重要でしょうか?ドイツ音楽
を通してご自身のルーツを辿っているという実感はありますか?
私にとって、すべての音楽作品は同等に重要です。バッハも、バルトークも。私はドイツ
で生まれ、イスラエルで育ち、その後はアメリカで暮らしながら世界中を旅してきました。
お前は何人かと問われれば、世界の住人だと答えるでしょう。
1939
年にパレスチナに亡
命したとき、私の人生を救ってくれたのが音楽でした。当時
16
歳だった私は、一変した
生活に、どうしても慣れることができず、食事も喉を通りませんでした。“根無し草”となっ
たことが、心に重くのしかかったのです。すべてを、もういちど無から構築していかなけ
ればなりませんでした。話す言葉も、友人関係も……。じつに辛い数年間でした。幸運
にも私は、素晴らしい教師たちと出会うことができました。彼らは私を励まし、私の人生
に、音楽家として生きるという意味を与えてくれたのです。