

今回のアルバムの曲目についてご説明ください。
じつに明るいソナタ
K.333
と、ハ短調のソナタ
K.457
に、同
じくハ短調の幻想曲
K.475
を組み合わせました。
2
つのソナ
タは劇的かつヴィルトゥオジックで、多彩な顔を持ちあわせ
ています。そのため奏者にとっては、技術的にも、独創的
な旋律やドラマやロマンスを扱うという点においても、難曲
です。納得のいく演奏に至るためには、膨大な量の準備を
こなさねばなりません。奏者には、自身の持てる全てのテ
クニックと、真の音楽性、そして何より、向上心と辛抱強さ
が求められます。ところで、私が唯一、ある種の真理に到
達できたと感じるのは、聴衆とのコミュニケーションが確立
されたときです。ただ聴き手の反応だけが、本質に至れた
ことを証明してくれるのです。演奏とは、つねに聴き手に向
けられるべきものです。