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ラヴェル / デュティユー / ドビュッシー
3作品の中でもっとも古いドビュッシーの弦楽四重奏曲が、今回のアルバムの最後を飾
っています。おそらく収録曲の順番は、あなた方がフランスの弦楽四重奏曲の傑作を“制
覇”していった過程を反映しているのでしょう。ドビュッシーの作品を演奏するようにな
った経緯をお聞かせ下さい。
ドビュッシーの弦楽四重奏曲との出会いは、エルメス四重奏団にとって特異な時期でした。
私たちが留学先のドイツで、演奏や音作りに関して新たなアプローチと向き合っていた時
期です。ベルリンでは、“音楽的な直観はどこからやってくるのか?”という問題に直面し、
自問するようになりました。最初は自明なものに思えたドビュッシーの弦楽四重奏曲の解釈
は、常に変化し続けるようになりました。ドビュッシーの弦楽四重奏曲は、極めて多くの解釈
の可能性を示唆する作品であり、今回の録音でも、その中から一つの可能性を選択する
必要に迫られました。
この作品に宿る円熟味、力強い感情、さらには肉欲的な次元が、私たちの心をとりわけ揺
さぶります。今日、エルメス四重奏団がもっとも頻繁にコンサートで取り上げている作品がド
ビュッシーの弦楽四重奏曲であることは、全く偶然ではありません。