

エルメス四重奏団
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2年前にリリースしたデビュー盤には、シューマンの3作の弦楽四重奏曲(作品41)を収
めていらっしゃいます。なぜ今回はフレンチ・プログラムを選んだのでしょうか?
エルメス四重奏団(以下、Q. H.)
:当初シューマンの作品
41
の録音を決心した時、エルメス
四重奏団のレパートリーに含まれていたのは第
3
番だけでした。しかし私たちは、全
3
曲に
挑みたいという強い願望を抱いていました。全
3
曲の録音を通して、私たちは、もっぱら一
人の作曲家とその想像世界に向き合いながら、極めて独自の演奏を追求することができま
した。さらにこの貴重な経験は、誰もが青春期に抱きうる率直で衝動的な感情を表現する
機会にもなりました。
実は、ラヴェル/デュティユー/ドビュッシーというレコーディング・プログラムは、デビュー
盤の内容を決める際に、既に一案として挙がっていました。しかし当時の私たちは、フラン
スの室内楽のレパートリーを語る上で避けて通ることのできない
3
作品にすぐに取り組むの
ではなく、まずは一人の作曲家(シューマン)に軸足を置くことを選びました。とりわけラヴェ
ルとデュティユーの弦楽四重奏曲は、私たちの活動にあまりに長く寄り添ってきた音楽でし
たから、この
2
作品の解釈をすぐさまデビュー盤に“固定”してしまうことに、ある種の懸念も
ありました。