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エルメス四重奏団

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デュティユーの《夜はかくの如し》も、あなた方の経歴にとって重要な作品であり、あな

た方に幸運をもたらした作品でもあります。エルメス四重奏団は、2009年にリヨンの

室内楽コンクールで、この曲とラヴェルの弦楽四重奏曲を演奏して第1位に輝いていま

す。2011年には、ジュネーヴ国際コンクールの決勝で、この曲とベートーヴェンを弾いて

優勝していますね…

夜はかくの如し》は、ラヴェルの弦楽四重奏曲を弾き始めて間もなく、私たちのレパートリー

に加わりました。

2008

年に、リヨンのコンクールへの出場を目指して、丸々1週間、皆で集

まってこの曲をさらいました。素晴らしい音楽ですが、目の前にある大きな楽譜は極めてグ

ラフィックで、小節線も用いられておらず、かなり当惑しました…。曲の構成が極めて精巧

ですので、最初はやや足がすくみました。しかし、ひとたび曲を把握した私たちは、有機的

な素材の展開を感じることができるようになり、複雑な書法の彼方に潜む壮大な詩情に魅

せられました。

この曲の厳密さは、音楽的な身振りと連動しています。つまり作品には、視覚的な——言う

なれば“舞踊的な”——側面があるのです。演奏後に聴衆の方々と話してみると、彼らはし

ばしば、この側面に反応を示してくださいます。デュティユーはまた、この作品において即

興性に余地を残しており、幾つかの個所に“リズムを形作る音価が、過度に厳密に順守さ

れてはならない”と明記しています。さらに、複数の弦楽器の異なる音域を完璧に活用した

《夜はかくの如し》は、管弦楽法の極みを示してもいます。