

聴衆はそうしたプロジェクトを歓迎していると思われます
か?
前向きに受けとめられつつあると感じます。しかし、悲観的にな
らざるを得ない状況もあります。たとえば、クラシックのアー
ティストたちを――音楽的なクオリティは重視せずに――“スタ
ー”に仕立て上げていく風潮です。私が幼いころ好きだったクラ
ラ
・
ハスキルは、現代に生きていたら、果たしてきちんと評価さ
れたでしょうか…。こうした表面的で煌びやかな世界において、
フォルテピアノは、高慢さに対する最良の薬となるでしょう。謙
虚であることを学べるのですから。フォルテピアノ奏者が、大ソ
リストたちのように“スター”にされることは、まずありません。
彼らは本番でも楽譜を見ながら、適度なサイズのホールで演奏し
ます。そこで私たちは、もうひとつの“音楽との関係性”を目の当
たりにし、人生の真の教訓を得るのです。
リヒテルは、そうし
た謙虚な姿勢とは何かを、次のような言葉で見事に言い表しまし
た――「私は解釈者です。」