

37
ヴァネッサ・ワーグナー
具体的にどういうことでしょうか?
私は、自分の魅力を発揮できるようなプロジェクト――種々の芸術が境界をまたい
で浸透し合うプロジェクト――を通じて、自由を手に入れたいと思っています。そ
うしたアプローチは、演奏家としての独自性を模索していた時、私を再び奮い立た
せてくれました。独自性は前もって与えられるものではありませんから。私は、年
間
150
公演をこなしながらリストやショパンの作品をすべて弾きこなすというよう
な、ステレオタイプのピアニストであったことは一度もありません。私自身はその
ような、音楽院を出たての若者たちを待ち受けている既成のキャリアには、心惹か
れませんでした。国際コンクールに出場したこともありません。歳と共に手にした
成熟や経験が、自分自身を知り、自らの選択を受け入れるよう背中を押してくれて
います――今取り組んでいるプロジェクトの中には、
20
年前の自分だったら挑戦し
なかっただろうと思うものが幾つかあります。例えば、アーティストのムルコフと
考案したプロジェクトでは、ミニマル音楽と電子音楽を結び付けています。それは
新たな地平を拓きたいという意志表明であり、固有の一貫性と音楽的意義をもつ実
現の積み重ねでもあります。私の原動力は、自分のキャリアと人生を創出していく
ことなのです。