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フレデリック・ショパン / ポロニア

今回は初期の作品は除き、大ポロネーズ(作品26 、作品40、作品44、作品53、幻想ポロ

ネーズ)に絞って録音なさいました。その理由をお聞かせください。

当初は初期のポロネーズも演奏したかったのです。何曲か、あるいはせめて1曲でも、足そ

うと思ったほどです。しかし考えを変えました。ワルシャワで最後に書かれたポロネーズと、

パリで最初に書かれた大ポロネーズの間には、

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年もの開きがあるのです。後者は全く異な

る世界で作曲されました。苦しみや絶望を抱えた亡命者によって。それは踏みにじられた

自由に対する、音楽による抗議でした。そのため録音に当たっては、この特異な世界に留

まる必要があったのです。

壮大な詩である《幻想ポロネーズ》をどのように捉えていらっしゃいますか?

他の全てのポロネーズを総括する存在です。抒情詩であり哀歌でもあります。そこには怒り

と諦念、即興的な要素があります。だからこそ、この作品の録音は容易ではありません。シ

ョパンがどのようなタイプの即興の名手であったかはよく知られています。彼は自分で書い

た音を自由に変えていました。しばしば弟子たちにも即興させました。《幻想ポロネーズ》の

大部分を占めているのは、独創的かつ自然な書法です。その好例が冒頭でしょう。字義通

り、新しい音の世界が私たちの目の前に開かれます。決して中断されることが無いように思

えるあのフレーズと、最後の数小節における喜びに満ちた精華。録音の際には、自分がこ

の作品に対峙した時に抱いたそのような感情を表現したいと思いました。