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86 BRAHMS_INTÉGRALE DE L’ŒUVRE POUR PIANO

この点において作品35は、作品24とは対照的である。

パガニーニの《カプリース 第24番》(作品1)の主題の

展開は二の次なのだ。ブラームスの全作品中で唯一、

潔くヴィルトゥオジティに重きが置かれている――ま

るで彼が、鍵盤の可能性を網羅しようとしているかの

ように。クララはこの作品を「魔女たちの変奏曲」と形

容した。クトーの見解はこうだ。「私たちはそこで、ブラ

ームスが実は4つの手を持っていたということに気づ

かされる…。しかしヴィルトゥオジティを越えて、そして

ヴィルトゥオジティを通して、ブラームスは自身の音楽

言語の鍵を惜しげもなく与え、演奏者に道を開いてく

れる。」ブラームスが当初「練習曲」と名付けた作品35

は、演奏テクニックに重きを置きながらも、表現の豊か

さを全く軽視していない。その点で、リストとは距離を

置きつつ、バッハやベートーヴェンの偉大なる伝統を

湛えているのだ。この作品は電撃のごとき機械的な性

格を有しながらも、ブラームスが初期の変奏曲ですで

に重視していた方針に沿いながら、多様で詩的な光景

を次々に生み出している。