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ヨハネス・ブラームス_ピアノ独奏曲全集

ブラームスの創作全体は、例えばベートーヴェンのそれとは異なり、はっきり

とした岐路を境とする厳密な時代区分に沿わない。しかしピアノ作品にのみ

目を向ければ、より明確な分類が可能だ。青年期は、《スケルツォ》から《4つ

のバラード》までを含む一連の作品(「青年期」という呼称は、あくまで当時の

ブラームスの年齢にちなんでおり、書法の未熟さとは関係が無い。)これに続

くのが作曲の技術的な発展の時代だ(ここに数々の大規模な変奏曲が含ま

れる。)瞑想的な最後の作品群は、2つの短い期間にさらに区分されるが、全

体として後期を形成する。それらはもはや、以前のソナタや変奏曲(《4つの

バラード》は例外)の様な古典主義的な形式から遠ざかり、よりロマン主義的

な風采を備えている。

《ハンガリー舞曲集》の出版から(そして交響曲第1・2番の初演から)約10年

が経った1878年の夏は、“《ヴァイオリン協奏曲》の夏”だった。実にブラーム

スらしい、粗野でありながら愛情深い魂に支配されたこの夏に、ブラームスは

再びピアノと向き合う。