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時折、すべての要素がこの上なく調和したと思える瞬
間もありました。例えば《ダヴィッド同盟舞曲集》を弾
いたときです。実はこの作品を、2回演奏しています。1
度目は2015年11月のパリ同時多発テロ事件の直後
です。聴衆はまばらで、とても暗く重い雰囲気が漂って
いたことを覚えています。こうした状況の中で、ファン
タジーあふれる快活で軽やかな音楽を奏でることは
困難であり、私自身、悪戦苦闘しました。そのため、こ
の作品を6か月後に再び弾くことにしたのです。2度目
は大成功でした。ひとつひとつの音が指の間からよど
みなく生じ、曲は私が無理強いせずとも難なく進展し
ていきました。私はもっとも自然な状態に身をゆだね
ることができたのです。全ての録音の中でも、とりわけ
印象深い瞬間のひとつに数えられます。
ダナ・チョカルリエ