

124
ロベルト・シューマン
_
ピアノ独奏曲全集 (ライヴ録音)
ロベルトとクララ
私を導いてくれたのは、ロベルトとクララの間に起こった出来事ではなく、
2
人の熱烈
な愛が到達したロマン主義の極みが表象する物々です。天賦の才と想像力に支え
られた強い情熱は、微粒子のような、目には見えない数々の形跡を残しました。演
奏者である私は、これらの神秘的な(あるいは力強く、磁力を帯びた)愛の名残が自
由に動き回れるよう、息を吹き込んでいくのです。
シューマンの初期の作品は、すでに極端な感情の芽生えを予示しています。《
6
つ
の間奏曲》や《ダヴィッド同盟舞曲集》がその最たる例です。彼がごく早い時期に自
身の“ミューズ”に出会えたことは幸運でした。おまけに、全ての偉大な作曲家たち
がミューズに恵まれたわけではありません……。クララが作曲家シューマンを“作り上
げた”とまでは言いませんが、それでも
2
人は、雷を待つ避雷針のように互いを引き
寄せました。クララはロベルトの理想を体現しました。ドイツ・ロマン主義特有の憧憬
に満ちたシューマンの想像世界において、クララは重要な役割を演じました。《ミル
テの花》は、彼がクララとの結婚を記念して彼女に捧げた歌曲集ですが、その中心
に<睡蓮の花>が配されていることには、深い意味があるのです。