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マヌエル・デ・ファリャ
とはいえ、初期の作品群と《ベティカ地方の幻想曲》の隔たりは明らかです。貴方は、ファ
リャの作品全体の中に《4つのスペイン小品》をどのように位置づけていますか?
《
4
つのスペイン小品》はアルベニスから霊感を得ているとよく言われます。しかし、ごく限ら
れた素材や、余計なものを排除した簡潔な音楽言語は、ファリャならではのものです。これ
は《ポール・デュカスの墓のために》にも指摘できます。この作品にも、必要不可欠な表現
のみに徹するという、同様の態度が見て取れるからです。《
4
つのスペイン小品》は若書きの
作品ですし、確かにアルベニスやドビュッシーから影響を受けています。それでもファリャ
はこの曲集を通して、最小限の素材で最大限の表現をするという、自らの芸術の原則を示
しています。むき出しのピアノ書法、“装飾のための装飾”の放棄…そうした全てが、決定的
な独自性をもたらしています。奏者は、こうした音楽言語を“手なづける”必要があります。
私もまた、長い年月を経てようやく《ベティカ地方の幻想曲》を演奏しました。譜読みを始め
た時には、自分がファリャ固有の、極めて特異な音楽言語に向き合うことになると悟りまし
た。《ベティカ地方の幻想曲》は紛れもなく、稀有なピアニズムに貫かれています。