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ファリャの最初の大作はピアノ曲だった――《
4
つのスペイン小品》というタイトルは、あくま
でも曲の性格を表すものであって、そこに民族主義的な思惑はない。この曲集は、アルベ
ニスの《イベリア》を受け継いでいると考えられる。
1908
年
1
月
2
日、ポリニャック公爵夫人の
サロンでブランシュ・セルバが初演した《イベリア》から影響を受けたファリャは、パリで《
4
つ
のスペイン小品》を完成させた。ファリャは、すでに
1906
年にマドリードで<アラゴネーサ>
と<クバーナ>を作曲していた。彼は《イベリア》との決定的な出会いをきっかけに、この
2
作を再び手に取り、推敲したのだ。刺激を受けた彼はさらに2月に、<モンタニェーサ>と
<アンダルーサ>をすぐさま書き上げた。
<アラゴネーサ>はもともと、アルベニスの《旅の思い出》からインスピレーションを得て書
かれた。<アラゴネーサ>で用いられているテーマは架空の民謡であるが、<クバーナ>
のそれは、実在の「グアヒーラ」に由来する。これはゴットシャルクが人気を高めた種々の音
楽と同様、カリブの音楽である。「風景」という副題が付された<モンタニェーサ>は、曲集
中の傑作であり、ファリャのもっとも優れた小品のひとつに数えられる。この曲の一音一音
は、アルベニスが《イベリア》以前に書いた印象主義的な大作《ラ・ベガ(草原)》に呼応して
いる。鐘の音、音色の拡がり、詩的な空間が、どこまでも緻密な風景を織りなし、続いてアイ
ロニーを帯びた小歌が私たちの耳を楽しませる――それは反教権主義的な歌の引用だ!
そしてこの歌は、和声的な展開の中にすぐさま消えていく。<アンダルーサ>のリズミカル
な熱情は、フィナーレならではの性格を際立たせている。フラメンコのカンテ・ホンドを呼び
起こし、様式化しているこの曲は、踊り子の姿を浮かび上がらせ、カンタオール(フラメンコ
歌手)の歌声を響かせる。和声書法は革新的だ。《
4
つのスペイン小品》は、リカルド・ビニェ
スによって
1909
年
3
月
27
日にサル・エラールで初演された。曲集の壮麗さと、ファリャの謙虚
さに魅了されたデュカス、ドビュッシー、ラヴェルらの口利きで、ファリャはデュラン社と楽譜
出版契約を交わすことになる。
ウィレム・ラチュウミア