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ジョフロワ・クトー

今回ジョフロワ・クトーは、ブラームスの全ピアノ独奏曲を年代順に録音

した。この決意は、聴き手と共にブラームスの作曲様式の変遷を時の変

遷として――そして一つの人生の変遷として――捉えたいという強い想

いに端を発する。

クトーの試みは、イプセンの戯曲『ペール・ギュント』の主役に挑む若き俳

優のそれに喩えられるだろう――戯曲の冒頭では20歳の若者として登

場するギュントが、約6時間後には人生の黄昏時を迎えるのだから。

イプセンはギュントの人生を介して、“自分とは何か”を追求することの重要

性を私たちに伝えている。それこそまさに、ブラームスの音楽言語の軌跡

の課題でもあった。