

メンデルスゾーンの最初の二つの弦楽四重奏曲、作品
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と
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は、それぞれの違いを超えたところで、ある共通性を
示している。それは、ベートーヴェンを模範とし、時には引
用していることである。具体的には、全体的にソナタ形式を
尊重した上で、風変わりにも循環形式の要素を使用している
こと、バッハから借用し、モーツァルト、ハイドン、そして
特にベートーヴェンによって濾過された対位法的な書法、さ
らに、ベートーヴェンのスケルツォを、カンツォネッタやイ
ンテルメッツォの形で優雅かつ軽快に刷新していること等々
が挙げられる。ベートーヴェンの効果的エネルギーをこのよ
うに詩的に変容させること(それは『真夏の夜の夢』の序曲
にみられる、かつてない交響的色彩によって称揚されてい
る)は、おそらく、メンデルスゾーンが音楽全体にもたらし
た最も本質的な寄与であろう。それは、当時の音楽だけでな
く、現代の音楽にも言えることなのだ。今まさに、メンデル
スゾーンの音楽の繊細なニュアンスを再発見し、それにふさ
わしい地位を与える時が来ているのである。
弦楽四重奏曲 全曲
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