

メンデルスゾーンの手になる三十一曲の室内
楽作品は、彼の「秘密の花園」と言えるもので
ある。その異例の作品群の最初となったのは、
電撃作品とも言うべき十七歳の時の代表作
『弦楽八重奏曲』である。
シューマンはメンデルスゾーンをひいきにし、
1835
年には「フェリックス・メリティス」*のあ
だ名をつけたほどだ。作品を分析すると、一度
ならず、我々が彼について知っていると思って
いるのとは逆のことが浮かび上がってくる。
『弦楽四重奏曲』でのメンデルスゾーンは、何
よりも悲劇に情熱を傾ける音楽家なのである。
*
訳注.ラテン語で「功績による幸福」の意、フェリックスという名には幸
福な、または祝福されたという意味がある