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車輪は回る……

現在ではフェリックス・メンデルスゾーンは敬意を受けるようになった。それは、クルト・

マズーアのような大演奏家や、ポスト・モダン派や新調性派の流れに属する若い作

曲家たちが、メンデルスゾーンの才能の正当性を明らかにするようになったからだ。

歴史の車輪は回っているのだ ……

数十年も前からメンデルスゾーンに対して下されている愚かな判断のなかでも最

も奇妙なものは、彼の音楽が「軽い」ということであろう。抑制のきいた簡潔さを単

純さと混同し、華々しさを軽薄さと取り違えている「専門家」の目には、この「軽さ」ゆ

えに、メンデルスゾーンの音楽全体が疑わしいものになり下るのである。彼らのよう

な「知性」崇拝者たちは、オッフェンバックの『ラインの妖精』に見られる天才的な楽

才や、ロッシーニのカンタータが見せる深さをきちんと推し量れるのであろうか

?

彼ら

が、『パウルス』や『エリアス』、または『真夏の夜の夢』などの曲をこれまでと違った耳

で聞くことを祈るばかりである。

弦楽四重奏曲 全曲

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