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ホアキン・アチューカロ

E.T.A.

ホフマンの 『牡猫ムルの人生観』 に出てくる音楽家クライスラーの名前に

着想 を 得 た 題名の も と 、 ク ラ ラ は作曲家 を 代弁す る 人物 と し て 登場す る 。

幻覚と目眩の間でゆれる八つの曲をとおして、私たちはシューマンの複雑なプ

シケーに至近距離まで近づくことができる。美学者マルセル・ボーフィスが言うよ

うに、「シューマンにおいては、創造作品の根源層、つまり形として噴出する前の

段階で作品が温められる原始的な世界は、文学なのである 」 。

Schnell und

spielend

( 速く 、 そしてやすやすと ) との指示のある中で、

mit aller Kraf

( 力の限 り ) と 示 さ れ た 和音が鳴 り 響 く 終曲 を 聴 く と 、 ボー フ ィ ス の次の一

節を思い起こさずにはいられない。

「シューマンは効果のない構成にはこだわらない。結局の

ところ、彼にとってそれは、最初は任意の組み合わせでしか

なく、そこではリズムの要素が創造的な全体から下手に切

り離されている。人間のリズムは、規則に支配される造形美

に屈することはないのだ。それは独自の法則に従っている。

その法則がアナルキーであっても。自身の中にある力とい

う、間もなくニーチェ的なものとなる法則に。その投影線が

不完全なものに見えたとすれば、それは、人間の目が、無

限との出会いの中でその線をたどることができないからな

のだ。」