

ホアキン・アチューカロ
21
ここに収められている 『幻想曲』 と 『 クライスレリアーナ』 は、
2003
年
10
月にマ
ドリッドで録音したものである。音響技術を担当していたスティーヴ・テーラー氏
のことは大変によい思い出として心の中に残っている。彼は時に、私がシューマ
ンのリズムに対してとても気難しいことに驚いていたようだが。深い思い入れのあ
るこの録音が再び日の目を見ることになり、とても嬉しく思う。
この文章を書きながら、振付師のアレクサンダー・サハロフ氏(
1886-1963
)のこ
とを思い出している。シエナのキジアーナ・アカデミーの学生だった頃に、氏の
知己を得る幸運を得た。「ダンサーは、動きを、内面の生命で、内面的な時間で
埋めつくさねばならない」と彼は言っていた。その言葉の意味は、彼の手の動き
を見て理解することができた。
音楽を探求すること、つまり、内面の生命で音をい
っぱいにすることには、終わりがない。演奏家の仕
事の究極は、時間と音の美しさを現実のものとする
ことに尽きるのだ。
ホアキン・アチューカロ
(
2012
年
7
月)