

モーツァルト 幻想曲
KV457 -
ピアノソナタ
KV475 - KV332 /
クレメンティ ピアノソナタ
OP.34-2 25
ていないのです。遅く弾くには、それぞれの音符に存在意義がなければならな
いのです。
教育者として生徒に『幻想曲』やハ短調『ソナタ』を教えられたと思います
が。
A.C.
びっくりされるかもしれませんが、『幻想曲』は、パリ音楽院でたった一人の
生徒にしか教えていませんし、『ソナタ』は全く教えたことがなかったと思います。
『ソナタ』を弾くには深い尊敬が必要です。たんに弾くのではなく、なぜ弾くのか、
はっきりとした理由が必要なのです。
遅めのテンポをとられています。
A.C.
明快さと一貫性を尊重したからです。音楽は、テンポが速くなくても激しい
ものになり得ます。私には、テンポや、スラーや、アゴーギクの表示は、音符とお
なじくらい大切です。たとえ、時に至極危険な運指法があったとしても、作曲家が
記した表示をすべて尊重することを心がけています。
モーツァルトのこれら二作品にどっぷりつかって、さらにこれらを録音する
ことを頭において詳しく見ていったときに、発見された詳細などはありま
すか。
A.C.
実際、これまであまり注意を払っていなかったスラーや細かいことがらを見
つけました。もし
300
年生きられるなら、まだまだいろんなことを発見すると思い
ます。それには終わりがないということで、労苦であると同時になぐさめでもありま
す。もし死なないで時間がたっぷりあるとすれば、永遠に発見しつづけることがで
きるでしょう。音楽に終わりなし、です。