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アルド・チッコリーニ
モーツァルトがクレメンティを大変に厳しく評価していたことを考えると、こ
の二人の音楽をカップリングさせるのは意外といえます。ここに録音された曲
は、それぞれの性格を見せながらも、どちらもベートーヴェンを予告している
という点で一貫性があると見るべきではないでしょうか。
アルド・チッコリーニ
そのとおりです。この二人をつなげるものはまさにその
点です。モーツァルトは、クレメンティのことが我慢できなかったのですから(
1
)。
通常続けて演奏されるモーツァルトの『幻想曲』ハ短調KV
475
と『ピアノソナタ』
ハ短調KV
457
、ほとんど悲劇的とも言えるクレメンティの『ピアノソナタ』ト短調作
品
34-2
は、そのドラマ性でつながっています。
『幻想曲』と『ソナタ』ハ単調が貴方のレパートリーに入ったのはいつごろで
すか。
A.C.
60
歳頃でした。
かなり遅かったのですね。
A.C.
『幻想曲』には、ベートーヴェンのソナタの一部に見られるようなトーンと似
通ったところがありますが、白状しますと、これに怖気づいていたのです。この作
品は、見事な陰影を経て、最後にこれらを一種否定するような早い音階のパッセ
ージで終わっています。その精巧な構成には全くびっくりするばかりです。
『幻想曲』について、イヴォンヌ・ルフェビュール(
2
)は「細密オペラ」と表現
し、コルトーは「ドン・ジョヴァンニのすべてがここにあるではないか ?」と
言いましたが、どう思われますか。