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このCDでは、ピエルネとフォーレの他に、シャブリエ、サティ、セヴラック、マスネ、ドビュ
ッシー、タイユフェールと、フランス人作曲家が
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人もみられ、大きな比重を占めていま
す。
A.C. :
フランス音楽は私にとって麻薬のようなものです。ドビュッシーの『レントより遅く』をと
ってみましょう。この曲はいつになっても古びることがありません。この曲にも思い出がありま
す。ある時、マルグリット・ロン女史を尋ねていった時、私の願いをきいてこの曲を弾いてく
れたことがあります。彼女がドビュッシーの直接の知り合いで、いろいろと交換したことを私
は知っていたので、さらに感動が深かったのを覚えています。『レントより遅く』は、エクリチ
ュールが見事であるだけでなく、素晴らしい感受性にあふれていますね。メランコリックで、
なんともセンシュアルなワルツです。
シャブリエの『音楽帳の一頁』もたまらなく魅力的な曲です。ほれぼれするようなメロディが
あり、とてもシンプルで、音楽的に見事に倹約されています。「魅力」という言葉は、マスネ
の『とても遅いワルツ』にも当てはまります。ドビュッシーの『レントより遅く』に比べるとより大
衆的な魅力であるには違いありませんが、同じくらい存在感があり、ピアノという楽器によく
みあって書かれています。それはマスネのピアノ曲全体に当てはまることです。マスネがリ
ストに自作の『ピアノ協奏曲』をみせたところ、リストはこれを大変に好んだという逸話もあり
ます。
セヴラックの『ロマンチックなワルツ』ですが、この作曲家を除くことはもちろんできません。ロ
ラゲ地方の音楽家であるデオダ・ド・セヴラックは、私にとって、フランスの深い田舎を体現
しており、感動させられるのです。
ワルツ選集