

ルイ・ニーデルメイエールの古典宗教音楽学校で
学んだガブリエル・フォーレは、つとに教会音楽
家――とりわけパリ・マドレーヌ教会のオルガニス
ト――として知られていた。しかし彼は、毎日のよ
うにオルガンを弾いていたにもかかわらず、この楽
器のためには一曲も作品を書いていない。一方、
残された種々の証言によれば、師で友人でもあっ
たサン=サーンスのもとで研鑽を積んだフォーレ
は、傑出したピアニストだった。彼の演奏を特徴づ
けていたのは、深いタッチ、規則正しいテンポ、低
音域の重視、そして音楽外の効果には背を向ける“
音楽至上主義”的な態度であったという。