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カミーユ・トマ

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ジュリアン・リベール

プログラムのもうひとつの“柱”である、実に珍しい《無伴奏チェロ・ソナタ》も忘れてはな

りませんね。1923年に書かれた、今回の全収録曲中もっとも現代に近い作品です。先ほ

ども話題にあがった通り“知られざる”作品であるわけですが、貴方はこの曲に強い愛着

を抱いているようですね。

C.T.:

16

歳の時にこの曲を聴き、すぐさま心奪われました。その

2

年後に初めて演奏して以

来、折に触れて自分のソロ・プログラムに組み入れてきました。とりわけ最近は、私のレパー

トリーの中で重要な位置を占めています。

独奏チェロのための作品は、バッハの《無伴奏チェロ組曲》から現代曲まで存在します

が、その数はごく限られています。イザイのソナタは、私たちチェリストのソロ・レパートリー

の内、もっともロマンティックな作品です。この魅惑的なソナタにおいて、チェロは歌い、叫

び、語ります。ハ短調が、ほの暗さを醸し出します――この調性によって、最も低いC線を

鳴らし、楽器全体を振動させることができます。技術的に難易度の高いソナタに仕上がっ

ているのは、卓越したヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストであったイザイが、自らのヴァイオリ

ン書法をチェロに――彼はチェロを少し演奏できました――反映させているからです。ほ

ぼ全体が2声あるいは

3

声で書かれているため、複数の声部を奏でながら旋律を浮かび上

がらせるのは至難の業です

!

ソナタは<グラーヴェ>で幕開けします。フランクの音楽を彷彿させる、極めて厳粛で敬虔

深い楽章であり、最後には、神秘的に天へと昇っていくような3度と6度の短い音階があらわ

れます。実に比喩に富んだ音楽です。第2楽章<インテルメッツォ>は、今回のレコーディ

ングのテーマ“追憶”の精神に合致しています。中世の吟遊詩人がリュートをつま弾きなが

ら、城主たちの物語を歌う姿を想像させるからです。<イン・モード・ディ・レチタティーヴォ

>と記された短い楽章がこれに続きます。実にオペラ風で、音色と強弱の変化に富んでい

ます。終楽章<フィナーレ・コン・ブリオ>のフーガが、短いながらも極めて濃密な《無伴奏

ヴァイオリン・ソナタ》の幕を美しく閉じます。