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追憶 固有の世界

どのように“マドレーヌ”を選んでいったのですか?

C.T.:

自分の好きな曲を選んでいきました!フォーレの珠玉の作品は長年演奏しており、

ずっと録音を夢見ていました。サン=サーンスの《白鳥》はあまりに有名であるために、長い

あいだ距離を置いてきましたが、ジュリアンと共に初めてコンサートで演奏した時、

2

人ともこ

の曲の壮麗さに心動かされました。ですから今回の“追憶”プログラムに《白鳥》が加わった

のは自然な成り行きです。《セレナード》は《チェロとピアノのための組曲 作品

16

》からの抜

粋で、時代が曖昧な、どことなく中世風の和声が特徴です。

デュパルクの傑作《旅へのいざない》は、フランクのソナタと同様、プログラミングの初期の

段階で候補にあがりました。もちろん旋律をチェロで弾く場合、歌詞を聴かせることはでき

ませんが、それでも音楽がボードレールの詩に深く浸っているがゆえに、言葉を超えて語り

かけてきます。

J.L.:

それぞれの曲が固有の世界を有していることを意識し、開始音からすぐさま、その雰

囲気を醸し出さねばなりません。そのためにはチェリストとピアニスト、両者の協力が不可欠

であり、私たちは長い時間をかけて各々の“小さな”作品に向き合いました。しかし一方で、

作品にこめられた意味以上のものを表現しようとすることは避けねばなりません。