

37
ターリヒ弦楽四重奏団
ヤナーチェクの和声は和音が自由につながり、調性と旋法のはざまを行き来してい
る。そこでは、彼がとくに好んだ民衆音楽を、長期間にわたって観察してきたこと
が生かされている。この第2番の弦楽四重奏曲のクライマックスでは、ヤナーチェ
ク特有の天才的な書法が認められる。
秩序のない流れのなかで熱に浮かされたような内面的な情熱を伝えるには、その音
楽にも手の入っていない粗野なものが要求される。それが求められるのは、冷たく
徐々に練り上げていく中にではなく、それ以上に、疑わしい感情主義のにおう素描
的なメロディーの中にでもなく、むしろ同一のテーマを繰り返し、中断し、さらに
は激しく鳴り響かせる中に求められるのであろう。それは、疲労し尽くし、息苦し
くなり、生が途絶えてしまうまで、感情的な精粋をすべてひきだすということなの
だ。
それでも、真実に最も近づこうとすることは、ヤナーチェクにとっては美を放棄す
ることではなかった。強烈に心をとらえ、厳格で、燃えるような表現主義にまで自
らの作品を追い立てるような内面的真実を、彼は要求しているのだ。
人生への、女性への愛情告白。それがヤナーチェクのふたつの弦楽四重奏曲であ
る。ここに表現されている強い感情は、言葉を超えた、音の極みの中でしか伝える
ことができないのだ。彼はカミラに書き綴っている。
「時に感情は、それ自体があまりにも強すぎるので、音符の裏に
は逃避が隠れているのです。」