

フィリップ・ビアンコーニ
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は、ドビュッシーが指示したこのテンポを保つことが難しいこともあって、中間的な
速度で弾いていますが、この指示に近づく努力をする価値はあると思います。す
べての『前奏曲』と同様に、この曲でも、ドビュッシーは標題を曲の最後に付けて
いますが、さらに「シャルル・ボードレール」と付け足しがあります。この題は、ボー
ドレールの詩『夕暮れの諧調』の一行からとられていて、詩全体に立ち戻ることを
示唆しているのです。この詩にはもうひとつ大事な行を含んでいます。「憂いの
円舞曲 気怠い眩暈」です。この曲はワルツのリズムでもある
4
分の
3
拍子と、
4
分の
2
拍子が交互に、時には同時に出てきます。私は「憂いの円舞曲」と、ふた
つの拍子の間の不安定さがつくりだす「眩暈」という考えが気に入っています。テ
ンポについてもうひとこと言えば、第一集の『亜麻色の髪の乙女』と第二集の『ヒ
ースの茂る荒れ地』の響きに明確な共通性があることを考えると、ドビュッシーが
この二曲に同じメトロノーム表示(四分音符
66
)を指示しているのは興味深いと
思います。
聞き手 アラン・コシャール
(
1
) 『前奏曲集』第一集は
1909
年
12
月から
1910
年
2
月にかけて、第二集は
1910
年か
ら
1912
年にかけて作曲され、それぞれデュラン社から
1910
年と1
913
年に出版された。