

35
ターリヒ弦楽四重奏団
弦楽四重奏曲第
1
番ホ短調 作品
61
第
1
楽章「アレグロ・モデラート」の基本的なコンセプトは、ソナタの主要楽章と
同じである。第1ヴァイオリンが主要な役割をはたし、転調によってト長調の第
2
テ
ーマに移り、しばし第
1
テーマに戻って提示部が終わる。次にマズルカのモチーフ
が、そのあと、最初のテーマがそれぞの楽器による変奏曲の形で現れる。再現部
では、第
1
テーマによる短いストレットを経て、第
2
テーマがホ長調で明るく奏され
る。最後は、リズムあふれる
3
つの下声部によって支えられた第
1
ヴァイオリンが、
下降するメロディーラインを描き、クレシェンドで楽章を終える。
「アダージョ」はモーツァルトの弦楽四重奏曲「不協和音」のアンダンテ・カンタ
ービレに少々似通っており、
3
つのセクションで構成されている。最初のセクショ
ンはホ長調で、対立する
3
つのモチーフを組み合わせている。
4
声のリリカルなモチ
ーフ、付点リズムのあるモチーフ、力強い
3
連符の低音部にのって第1ヴァイオリン
が奏でるリート風のメロディーである。ホ短調の短い
2
番目のセクションでこれら
3
つのモチーフが繰り返された後、チェロによって終結部に入る。曲は高音部での第
1
ヴァイオリンのメロディーで終わる。
アレグロの「スケルツォ」ではピチカートによるメロディーが発展していく。トリ
オは、バグパイプのような
5
度の和音による低音部にのって、第
1
ヴァイオリンが民
謡風のメロディーを歌いあげる。
最初の
2
つの楽章と同じく、「ヴィヴァーチェ」は、変奏されて出てくる主要モチ
ーフによってつなげられた
3
つのパートで構成されている。
3
つめのパートは、唯一のテーマが冒頭句の役割を果たしている。短いハ長調のエ
ピソードの後、テーマはホ短調に転調し、フーガの主題となって様々な変容を遂げ
る。その後ト長調に移り、突然第1ヴァイオリンが快活なメロディーを演奏する。
再現部は内声部から行われ、これがストレットとなって作品が終わる。