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ジャン=フィリップ・コラール
作品に取り組む時、作曲家の伝記的要素に影響を受けられますか? ショパンが前奏曲
の一部をマリョルカ島への波乱に富んだ旅の途中で作曲したことはよく知られています
が。
ある曲に取りかかっている時、伝記的要素を分析することは拒否しています。自分の考え
方が歪められるからです。自分がショパンについて何を知っているかは、自分でよくわかっ
ています。音楽にその音楽家の家族写真を重ねあわせる必要はありません。また、自分の
作品アプローチを他から条件付けられないために、別の演奏家による同じ作品の録音は
聞かないことにしています。
日常的な練習メトードはどのようなものですか?
夜は絶対に練習しません。家族との生活を守りたいからです。
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時以降は別の世界に入る
のです。これが自分自身に立ち返る方法です。殻の中に閉じこもることはどんなことがあっ
ても避けますし、逃げます。確かにピアノのレパートリーは一生かかっても弾ききれるもので
はありませんので、日夜楽器に向かい続けていることはいくらでもできます。ただ私は、世
間とのコネクションを保ち続けて行くことは大事なことだと考えています。私にとっての理想
とは、日常生活のシンプルさからあまり遠ざかりすぎないことなのです。