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ブロードマン・グランドピアノ ウィーン 1814年製
ミュゼ
・
ド
・
ラ
・
ミュジーク(パリ音楽博物館)所蔵
E.982.6.1
本録音で用いられたのは、
1814
年にヨゼフ・ブロードマン(
1771-1848
)がウィーン
で製作したピアノである。プロシアに生まれ、
1796
年にウィーンに進出したブロー
ドマンは、当時、楽器製作者として圧倒的な人気を博していた。その腕をとりわけ
高く評価した作曲家カール・マリア・フォン・ウェーバーも、
1813
年に彼の楽器を
購入している。ブロードマンには多数のピアノ製作者を育てた功績もあり、なかで
も弟子のイグナツ・ベーゼンドルファー(
1796-1849
)の名は、今日もなお、その名
器とともに尊ばれている。
高い製作クオリティを誇る希少な楽器である一方、マホガニー仕立ての洗練を極め
た家具でもあり、女性の顔をかたどった仮面と葉をモチーフとする金銅の浮彫と、
竪琴の装飾がほどこされている。アクションはウィーン式で、鍵盤の音域は
6
オ
クターヴ。
4
つのペダル(ウナ・コルダ、バスーン、セレスト、フォルテ)によっ
て、音色や強弱を変化させることができる。
この楽器が
1982
年にミュゼ・ド・ラ・ミュジークのコレクションに加わった時点で
は、メカニック一式と、ほぼすべての弦が原形をとどめていた。その後、演奏に耐
えられるよう修復を行った
Christopher Clarke
が、アクションと弦を複製した。
文:
Thierry Maniguet
(ミュゼ・ド・ラ・ミュジーク学芸員)
音域:
6
オクターヴ(
F’ – f’’’’
)、
73
鍵
アクション:ウィーン式
ペダル:
4
本(ウナ・コルダ、バスーン、セレスト、フォルテ)
弦:平行(
1
音あたり
3
本)
ピッチ:
A=430 Hz